海外でびっくりしてほしい ~地シス 白木先生インタビュー~
- tuatstudyabroad
- 2020年4月2日
- 読了時間: 7分
更新日:2020年4月19日
今回は,吉田さんの熱烈な希望により,地域生態システム学科の白木克繁先生(森林水文学研究室)に,「海外との繋がり」をテーマにインタビューを行いました.白木先生の研究室では,海外との繋がりが強く,学生にも積極的に海外経験を積ませているそうです.
Q1:白木先生の研究について教えてください.
水がらみの自然災害を防ぐための研究をやっています.どんなふうに雨が降って川に水が流れてくるかを解析することで,大雨で斜面が崩れたり洪水が起きたりすることを防ぐ研究です.水がらみの中でも特に森林分野で研究をしています.

Q2:研究の中で海外との繋がりはありますか?
この前タイとベトナム行ってきたんだけど,これも研究がらみだったね.海外だと日本では起こらない,スコールや雨季乾季があるんだよね.そういった極端な条件だと,日本だと起こりにくいことが頻繁に起こる.極端なことが起こると災害が起こるので,日本国内だけではなく海外で調査することはすごく勉強になるね.気候変動によって,極端なことが日本でも起きがちになるだろうから,実際にそういった極端なことが毎年起こるところを調査するのは大事だね.
Q3:東南アジアで研究しているのは日本人が多い気がします.
熱帯雨林研究は最初アマゾンのほうが立ち上がったじゃん?やっぱりそこはアメリカやヨーロッパに近いということもあって,彼らが強いんだよね.東南アジアの熱帯雨林はアメリカやヨーロッパにやられちゃ癪じゃん(笑).アジア団結でやろうという気概で,日本がかなりアジアの熱帯雨林研究に関わっているんじゃないかな.
そして,東南アジアの熱帯雨林はアマゾンとは違うところがあるね.東南アジアの熱帯雨林は,山が急峻なところが多い.アマゾンはだだっ広いという感じ.東南アジアのほうは標高差があるから,生態学的にも防災学的にも学べる特色が多いね.
Q4:AIMSで東南アジアに行くのは,地シスにとってはすごく良いことなんですね.
そうだね.みんなあんまり地形とか自然とか考えないかもしれないけど,標高差があって色んなバラエティーに富んでいる場所は,環境とか地域のでき方とかを考えるのにすごく良いフィールドだと思う.地形のバリエーションや生態のバリエーションは大きいんじゃないかなと思ってる.先生はアマゾンとか南アメリカとかやってなくて,そっち知らないから適当なこと言っているんだけどね(笑).
Q5:白木先生は留学したことは?
留学したことは無いんだよ.一週間とかちょこまかと調査には行っていたね.英語苦手だったし今もそんなに得意じゃないんだけど,行ったら行ったで,向こうの人はこっちの言っていることをちゃんと聞いてくれる.向こうの人は「なになに?」って聞いてくれるから助かったね.伝えたいっていう気持ちがあれば,向こうが汲んでくれるからね.学会発表はそうはいかなかったけどね(笑).生活関係とか調査だと親身になって聞いてくれるから,あんまり心配していなかったね.

Q6:白木先生の研究室で,海外経験はできるのですか?
先生のところでは,年に一回は短期でいいから海外に行くというのを目標に,なんとかお金を集めてやっているよ.先生が一緒に行く調査という形で,AIMSの短期派遣よりもさらにライトなタイプの留学だね.海外の大学を回ると,「ちょっとゼミやってくれない?」って結構言われるから,そういう場で向こうの学生とこっちの学生が一緒になって話したり,ゼミの内容を英語で聞いたりしているね.うちのマスター生はもう3回も海外行っているかな.頑張ってお金集めて,とりあえず海外お試しって形で,海外に対する気持ち面でのハードルを下げていこうとしているんだよ.
以前マレーシアに行ったマスターの学生は,初めての海外で最初は英語が通じないと消極的だったのに,帰るときになったら「ちょっとマーケット行ってきます」って言って「彼らはなんで俺の英語分かんないんかな」なんて言って(笑)
調査だから英語をたくさん浴びていたわけでもないけど,一週間でもこんなに変わるんだなって驚いたよ.ツアー旅行じゃなくて,何が起こるかわからないという状況に置いてみると,人はガラッと変わるもんだね.

Q7:研究室に海外の学生の方は?
ベトナムとモンゴルから来ているね.五味先生とゼミは一緒だからインドネシア,中国,ブラジルからの人もいる.ゼミは海外の人が発表の時は英語だし,日本人も頑張ってやる人は英語だね.日本語でやるにしてもスライドの図表は英語にしてもらったりして,先生が説明したりしているね.
Q8:地シスは留学生が多いイメージがありますが,なぜでしょうか.
実験室で研究が完結する分野だと,海外の土地柄よりも試験管の中のお話じゃん.なんというか試験管の中が国際で,どこの世界でも一緒のお話というイメージがあるね.だからむしろどこの国でも同じことができる.でも地シスの分野となると,フィールドがメインのところがあるから,出かけて行かないとインターナショナルにならない,わからないっていうところはあるかな.
Q9:海外へ行くことの重要性
大事なことのうちの一つはびっくりすることだね.日本で常識と思っていたことが海外へ行くとそんなこと全然ない.一つ一つこれは別にこうでもよいんだと,だんだんピュアになってくる.これは日本にいたからこそ思っていたことで,実は日本に自分が育っていなかったらこんなこと考えていなかったな,って見えてくる.今までの自分は自分本来じゃなくて,日本に住んで日本の教育を受けていたからこう思っていたんだって,気づくことができる.
印象的なことがマレーシアであったんだよ.車を運転していた時に気づいたんだけど,速い人はめっちゃ速く,遅い人はゆっくり走る.自分が安全だと思ったらこの速度で走っても良いんだって考えているんだろうね.日本だと,常識的に周りに迷惑をかけずに何事も行動するっていうのが基本にあるじゃん.でも,マレーシアだと,周りは周り,自分は自分で自分のペースでやっていいんだって,車の運転でもそういったことが分かる.日本での常識とか日本での行動形態とかは,日本にいたからそう思っていただけで,海外では違うっていうのは勉強になるよね.
日本で思っていた常識とか,習慣とか,これは自分の特徴かなって思ってたこととかは,自分のじゃなくて日本に住んでいたことで生まれてきたものなので,「じゃあ自分の特徴って何?」ということにもう一歩踏み込める.自分の意志は本当に自分のものなのか見えてくるっていうのは海外へ行くことのいいことかな.だから先生は学生を海外に連れていくんだよね.
Q10:留学に行った農工大生に求めるものは?
他の人に伝播させてほしいかな.こういう楽しいことがあったよっていうのを.良かったことを伝えてほしいかな.思ったことを素直に言うのは大事なことで,就職などでも個性的にならなければならないという気持ちになりがちだけど,素直に自分はこう思うというのを表明するだけで,個性的にならざるをえないと思う.研究室やゼミでも,これが面白い,これが不思議に思ったということを伝えよう.そういう意見を持つのはその人の人生の積み重ねで,それを正直に伝えるだけで個性的だよね.そういう形で,何が面白かったなど伝えることで十分だよ.
他には,「気にしない」っていうのも大事だね.別に社会的に何かしなきゃいけないってわけでもないから,無理に頑張らなくていいよ.

Q11:最後に留学を迷っている農工大生にメッセージをお願いします.
留学って思いついた時点で行っちゃえばいいんじゃねって感じだよね(笑).留学っていう形だけじゃなくても,とりあえずいろんな国に足をつけてそこに何に気が付くかが大事でさ.留学がなんかあれだなって思ったら,旅行でもいいからちょっと海外行ってみるってだけでも感じることが違うと思うよ.
研究活動で海外へ行くのはすごくチャンスだと思うんだよね.研究がメインだから漫然と行くわけではない上に,空き時間もあるから色んな体験ができる.研究室がらみで海外にいけるチャンスがあったらどんどん手を挙げてみてほしいね.
迷っているという時点で予選通過だから,とりあえず行ってみなよ.危ないことをしないでなんでも試してみよう.
(文責:吉岡)
白木克繁先生のプロフィール
東京農工大学農学府自然環境保全学プログラム
連合農学研究科博士課程 森林水文学研究室
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