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私がインドネシアで先住民と暮らすまで

  • 執筆者の写真: tuatstudyabroad
    tuatstudyabroad
  • 2020年8月25日
  • 読了時間: 7分

はじめまして。北海道大学大学院文学院、博士課程1年の澤井と申します。

以前は、農工大の地シスで森林の勉強をし、2016年にAIMS長期派遣プログラムを利用して、半年間マレーシアプトラ大学(UPM)に留学しました。

おそらく留学中の話は他の人が「いい話・楽しい話」をしてくれていると思うので、私は留学前・後、インドネシアで先住民と暮らすに至るまでを中心に話そうと思います。


UPM 林学部
2017年2月 UPM林学部前にて。筆者


プロフィール

・名前:澤井啓

・留学時の所属:農学部 地域生態システム学科3年

・進路:北海道大学大学院文学研究科(修士)→北海道大学大学院文学院(博士)

・留学先:マレーシアプトラ大学(UPM)林学部

・留学期間:2016年9月2日~2017年2月28日(180日間)

※講義終了後も、指導教員の下で勉強のために1ヶ月以上残っていました

・備考:現在はインドネシア地域研究(北大広報サイト参照)

留学した理由?それは…

一言でいえば、将来のためと、突発的な衝動でした。

実は私は、10歳の頃読んだ一冊の本、その小さなコラムがきっかけで熱帯林へ10年以上も心を奪われています。農工大へ入学した理由も、林学を学ぶためでした。ただ入学前から、学部生のうちは大した研究ができないだろうと考えていたので(すみません)、大学院は移るのかもなあ、と漠然と考えていましたが。「熱帯林をやりたい」「でも農工大ではできない」という意識は、入学前から抱えていました。


直接的なきっかけは学祭委員が落ちついた学部2年次の12月頃、たまたまAIMSの募集と説明会をしていたので、ふらっと足を運んだことでした。「現地で熱帯林の勉強ができる!」そう気が付いたとたん、すぐに両親に相談し、TOEICを受けて申し込みました。今思えばもう少し考えて、誰かに相談してから申し込むべきでは…とは思いますが。AIMS自体は1年の頃から知っていましたが、まさか自分が行くことになるとは思っていませんでした。


UPM 授業
Ethnobotanyの講義で植生調査をする筆者

UPM 授業
Wildlife Managementの講義にて。数日間演習林に宿泊し、ひたすら野鳥を捕まえました!


採用~留学準備

衝動的に申し込んだこと正確からも想像できそうですが、全体的に準備不足でした。皆さんはちゃんと私を反面教師にしてください。英語力もかなり低く、なんとAIMSの英語面接があることも知らず(よく考えればあって当然)、ノープランで面接受けたりしていました。よく採用されたな…


採用後の手続きはもちろん、一応は自主的に準備を進めました。そのうち語学は挨拶や数字、曜日程度のマレー語を覚えただけでした。今思えば、英語を本気でやればよかったかな。渡航直後は(訛りも多少ありましたが)英語の聞き取りに苦労しました。

マレー人の留学生を紹介していただいて、彼女から語学やマレー文化も学びました。留学を終えて現地語が話せる今となっては、現地語は事前に覚えることを推奨します。マレー語とインドネシア語は簡単なのでおすすめです。やはり語学ができれば、トラブルも対処できるし、友人もできます。私と一緒の派遣学生(農工からは私だけだったので、他大の学生)は数字すら分からない状態でしたが、彼らと比べると日常生活かなり楽でした。


語学の勉強は微妙でしたが、専門分野はしっかり勉強しました。東南アジア地域や熱帯林に焦点を当てて、多くの書籍を読み、他大の先生に連絡を取って教えを請きました。この準備期間を通し、背景知識はもちろん進学のこと、やりたい分野などが見えていきました。



留学中の成長

留学の思い出は良いことも辛いこともいっぱいでした。ただ、自分はヘンテコエピソード多いのと、現代とは事情も違うので(例えば当時は1人派遣だし、Google翻訳すらかなり精度悪いし、電子書籍も少ないために現地で日本語の参考書は買えなかったり)、そこは他の人に任せて自身の成長について話していこうと思います。

まず、精神面です。こんな事を言うのは本当は良くないのかもしれませんが…大学にも話さないことも含め、いろいろな出来事・トラブルがあったので、対応力とタフな精神力はかなり身に着きました。これは現在の私の生活にもかなり影響しております。たまに留学に来て引き籠る留学生とかもいますが…留学中はまず間違いなく想定外のトラブルに多々直面するので、よほど消極的に動かない限りは良くも悪くも精神面はかなり成長できます。私はこの点が留学最大のメリットであり、留学中皆に積極的に動き、しっかり体験してほしいと思います。「留学直後は人生観変わったとは言っても、ちょっとしたら当時の思いや熱意、常識が元通りになってしまう」とはよく言われていますが、私は得た経験や価値観をずっとキープし、活かせていると思います。


また、普段の勉強に加えて期末試験や大量のレポートをこなすうちに、語学力や基礎学力も身に着きました。到着直後は、英語力が低いこともあってかなり苦労しましたが、できないとどうにもならないですし、工夫しているうちに自然と身についていました。専門知識も、なにせ勉強しないといけない環境下だったので、かなり身についていました。

なにより、経験による総合的な成長です。これは説明が難しいのですが…指導教員の先生に頼んであちこち連れて行ってもらったり、自分でジャングルをさまよったり、講義を受けたり、そして現地の人々と交流していくうちに、身体と頭が経験を積み、視野と知識、応用力などが幅広くなりました。特に、留学によって人生で初めて、本物の熱帯林を観ることができました。10年越しの夢を叶えて初めて見た熱帯林の光景、そして身体中から湧いたあの人生最大の感動を、私は一生忘れられないでしょう。あの経験があって、今の私があります。


マレーシア ジャングル
人生初のジャングル。後半は講義も含め週1回ジャングルに入っていたような…


Orang Asil
Orang Asliの村にて


UPMの指導教員と

指導教員の先生にはなんと大学院の実習を含め、いろいろなところに連れて行ってもらいました。この訪問経験は、「熱帯林」から「熱帯林を利用する人々」に興味を移した一つのきっかけになりました。



留学後…今なにしてる?

留学経験を経て、私の熱帯林への道はゆるぎないものになり、また一方で自分の不勉強を恥じ、勉強に真摯に取り組むようになりました。帰国後の4年生での卒論は留学で時間がなかったこと&コネクションがなかったため、熱帯研究とは全く別の研究をやりつつ、大学院を探して全国を回りました。某K大の入試では、入試問題が留学中の講義で学んだ知識ドンピシャで、喜んで活用して合格しました(辞退したけどね!)


今の私は「北海道大学」の「文学」院に在籍しています。興味分野の勉強と留学経験の結果、自分の興味関心に一番近い先生を選び、ここ北大で研究者を目指すことに決めました。インドネシアに頻繁に通い、留学で学んだ講義の内容や経験をフル活用して研究に取り組んでいます。もしかしたら、留学経験が一番密接に今につながっている学生かも?

今はインドネシア、カリマンタン島(ボルネオ島)中心部の、先住民K族の村で研究をしています。修士課程では絶滅危惧種の密猟の研究をし、彼らがなぜ狩猟をするのか、彼らにとっての意味や重要性を明らかにしました。数か月間村に一人で居候し、時には彼らの思いを聞き、時には一緒に狩りに行きました。冷静に考えると、衛生面とか不便さとか、片言で初めていく村へのアポなし訪問&滞在などなど…日本での日常とはかけ離れているし、なにもかも一人で大変なのですが、不思議と適応しているのは留学で精神面がかなり鍛えられたおかげでしょうね、間違いなく(笑)



聞き取り調査の様子。1人1人、時間をかけて調査しています。


どうしても伝えたいこと

留学はあくまで「学ぶ」場です。決して楽しいキラキラした旅行のようなものではなく、机にかじりつきひたすら勉強し、苦労をいっぱいします。現地で一緒に過ごした他大の友達と再会すれば、口から出てくるのは苦労の思い出です。また、様々な人が自分たちのために時間と労力とお金を割いてくれています。渡航前の準備や卒業単位の計算も大変です。なので、私は留学を万人にはお勧めしません。ここで私は苦労とか大変だとかばかり書いていますが、これは私が渡航前に少々勘違いし、また現地で苦労したので、この場でどうしてもお伝えしたかったです。


あくまで個人的な意見ではありますが、異文化交流や話のネタにだけなら、休みや休学を使って一人で旅行することをはっきりとお勧めします。英語を学びたいなら語学学校に行った方が早いです。就活のネタや自分探し(?)なら、国内でインターンとか、せいぜい短期留学でいいかなと。海外でいったい何を学びたいのか、なぜ留学したいのか、しっかり考えてから留学を検討して下さい。誤解をしないでほしいのですが、留学を引き止めたいわけではないです。かなり漠然としていてもOKです。ただある程度の意思や目標がないと、留学中に積極的に動き、得られるものを最大限に引き出し、そして帰国後への活用ができないと私は思います。


海外の大学で苦労の末に得られるものは、日本では得られない、未知のなにかがあるはずです。もしあなたが留学を経験したのであれば、それを活かしてください。必ずしも、私のように研究へつなげる必要はありません。あなたが得て、学んだ「思い」を、忘れず大切にし、将来へつなげてください。



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